Dダイマーが高い日の離床、止めるか進めるか。検査値と下腿の所見から考える
2026.10.30
深掘りセラピストマガジンVol.18|Dダイマーが高い日の離床、止めるか進めるか。検査値と下腿の所見から考える

八柄
はじめに、10月27日(火)のLINEに答えてくださったみなさん、ありがとうございました。
伺ったのは「離床を進めるとき、いちばん手探りになるのはどの場面ですか?」です。最多は「血栓や検査値が気になり、離床と負荷をどこまで上げるか迷う」(A・63%)でした。

いちばん多かったのは「血栓や検査値が気になり、離床と負荷をどこまで上げるか迷う」でした。

八柄
僕も同じところで止まります。Dダイマーが高いと分かった日に、離床を見送ったことがあります。
今回はAに絞り、Dダイマーの読み方から血小板が低いときの負荷まで、4つの場面で話します。
この記事の結論
検査値1つで離床を決めず、値の経過と下腿の所見を合わせて読み、迷えば医師に相談する。
- 値を経過で見る
- 下腿の所見を左右で比べる
- 血小板数と施設の中止基準を確かめる
Dダイマーが高いと、離床を止めたほうがいい?

齊藤
採血の結果にH(High=基準値より高い)の印が1つ付くと、その値に引っ張られるよね。私なんか、朝の体重計の数値が少しでも多いと、その日の昼を抜くからね。

八柄
僕は、凝固系にHの印があれば、主治医の指示が出るまで離床を待っていました。

齊藤
体重計の話は流したね。見送った日のDダイマーは、基準値からどのくらい離れていて、手術の日からどう動いていた?

八柄
どちらも答えられません。Hが付いていた、で止まっていたんです。

齊藤
そこなんだよね。検査値の読み方の基本は3つ。ずれの程度、時間での変化、ほかの値との組み合わせ。
ずれの程度は、変化やほかの値と合わせて読む。負荷の見直しや中止は、検査項目と患者の状態に応じて考える。Hの印1つで決める話じゃないんだ。
基準値は施設によって違うので、自分の施設の値で確かめる。
Dダイマーは多くの入院患者で上がります。臨床確率が低〜中で基準値以下なら血栓は否定的、高値でも血栓とは断定できないため、下腿の所見や下肢静脈エコーと合わせて読みます。10µg/mLは1施設のTHAの運用の例で、一般の診断の線ではありません。
出典:吉光一浩 他.整形外科と災害外科 68(2), 2019/2025年改訂版 肺血栓塞栓症・深部静脈血栓症および肺高血圧症に関するガイドライン。※当会セミナーの配布資料の内容をもとに、当メディアで作図(新規作図)。原画の転載ではありません。

八柄
Dダイマーは、高ければ高いほど血栓の可能性が上がる、と読んでいいですか。

齊藤
目安にはなる。ただ、手術のあとなど、血栓以外の理由でも多くの入院患者で上がる。
THA(人工股関節全置換術)の1施設の報告では、術後1週のDダイマーが10µg/mL以上なら下肢の超音波検査をしている(吉光ほか 2019)。
一般の診断の線ではないので、10未満でも下腿に疑わしい所見があれば医師に伝える。
次の節の臨床確率が低〜中で基準値以下なら、血栓は否定的。高値でも血栓とは断定できない。
まとめ|Dダイマーは臨床確率が低〜中で基準値以下なら血栓は否定的、高値1つでは断定できない。値は、ずれの程度・前の採血からの変化・ほかの値との組み合わせで読む。
明日からの臨床に活かすポイントHが付いた日は、基準値からのずれと前の採血からの変化を確かめ、下腿の所見を取って医師に伝える。
Dダイマーが高かった日、何を見て誰に伝える?

八柄
Dダイマーが高かった日は、何を見て誰に伝えればいいでしょうか。

齊藤
まずWellsスコアだ。DVT(深部静脈血栓症)がありそうかどうか(臨床確率)を、下肢の所見と病歴の10項目の合計点で見積もる。
0点以下が低確率で5%、1〜2点が中確率で17%、3点以上が高確率で53%(外来でDVTが疑われた患者のまとめ・Wells 2006。入院や術後の患者にそのまま当てはめない)。
10項目のうち下肢の所見の5つは私たちが確かめられる。その結果を医師に伝えれば、次にどの検査をするかを決める材料になる。

Wellsスコアは、所見と病歴を点数にしてDVTの可能性を見積もる道具です。10項目のうち5つはセラピストがベッドサイドで確かめられ、その結果は、医師が次の検査を決める材料になります。
出典:Wells PS et al. JAMA 2006 をもとに当会で作図。

八柄
初めて聞きました。私たちが確かめられる5つは、どれですか。

齊藤
下肢全体の腫脹、腓腹部の左右差が3cmを超えるか、圧痕性浮腫、深部静脈に沿った圧痛、表在静脈の側副血行路だ。
「腓腹部の左右差が3cmを超え、圧痛もある」のように、項目ごとの結果で医師に伝える。

齊藤
臨床確率が高ければ画像診断へ進む。低・中ならDダイマーを見て、高値なら画像検査、基準範囲ならDVTは否定的とする(ガイドライン 2025年改訂版)。

齊藤
画像検査を出すかの判断と診断、離床と負荷の最終判断は医師が行う。私たちがするのは、値の変化と下腿の所見を医師に伝えるところまで。
返事を待つその日も、離床をどこまで進めてよいかを医師に確かめる。下腿に疑わしい所見があれば、医師の判断を聞いてから離床を進める。

Wellsスコアの点数で、次に行う検査が変わります。画像検査を行うかを決めるのは、どの場合も医師です。
出典:2025年改訂版 肺血栓塞栓症・深部静脈血栓症および肺高血圧症に関するガイドラインの診断の流れをもとに当会で作図。
まとめ|Wellsスコアの下肢5項目は私たちが確かめられる。項目ごとの結果を医師に伝え、画像検査と離床の最終判断は医師に委ねる。
明日からの臨床に活かすポイントDダイマーが高い患者さんは、腓腹部の周径の左右差・圧痛・腫脹・圧痕性浮腫・側副血行路を確かめ、項目ごとに「あり・なし」で伝える。
抗凝固療法が始まったら、歩いていい?

八柄
抗凝固療法が始まったあと、血栓があるのに歩行練習を進めていいのか迷います。

齊藤
ガイドライン(2025年改訂版)では、適切な抗凝固療法のもとなら、早期の離床や歩行でPTE(肺血栓塞栓症)は増えない、とされている。
勧められるのは、浮遊血栓がなく、下肢の痛みが軽く、全身状態が安定しているとき。浮遊血栓があれば、抗凝固療法中でも必ず医師と相談する。

齊藤
ワルファリンや未分画ヘパリンを使っている間は、PT-INRやAPTTにHが付くのが前提になる。
目標域の目安は、ワルファリンならPT-INR 1.5〜2.5(同ガイドライン)、未分画ヘパリンならAPTTが基準値の1.5〜2.5倍。
目標域は薬や患者の状態で変わる。延長をすぐ異常とも、治療が十分とも読まない。どの薬で、どの範囲に調整している値かを主治医に確かめる。

ワルファリンではPT-INR、未分画ヘパリンではAPTTを目標域に調整します。延長だけで治療が十分とは決めず、薬と目標域を主治医に確かめます。
出典:PT-INR=2025年改訂版 肺血栓塞栓症・深部静脈血栓症および肺高血圧症に関するガイドライン/APTT=日本ペインクリニック学会 抗血栓療法ガイドライン(抗血小板薬・抗凝固薬の薬理学)をもとに当会で作図。

八柄
治療の範囲なら、下腿の所見はもう取らなくていいですか。

齊藤
取り続ける。VTE(静脈血栓塞栓症)の再発率はPTE、中枢型DVT、末梢型DVTの順に高い。
抗凝固療法を中止して1か月のDダイマーが高値だと、再発リスクは1.5〜2.5倍という報告がある。療法後の検査の予定は医師に確かめ、下腿の所見の変化を伝える。

齊藤
THAは高リスクに入るけど、どのリスクレベルでも予防法に早期離床と積極的な運動が入っている(THAの術後はVol.15でも扱った)。
高リスクでは抗凝固療法か間欠的空気圧迫法を併せる。
うっ血を減らすため、足関節の底背屈を自動でも他動でも行う。
予防の足関節運動は痛みが出たらその場でやめます。DVT 治療中、適切な抗凝固療法のもとでの早期の離床・歩行は、浮遊血栓がなく、下肢の痛みが軽く、全身状態が安定しているときに勧められます。浮遊血栓があれば必ず医師と相談します。
出典:2025年改訂版 肺血栓塞栓症・深部静脈血栓症および肺高血圧症に関するガイドライン。※当会セミナーの配布資料の内容をもとに、当メディアで作図(新規作図)。原画の転載ではありません。

八柄
底背屈を患者さん本人にも行ってもらうなら、何を伝えておきますか。

齊藤
予防の底背屈なら本人にも行ってもらえる。DVTが疑われる・診断されている場合は、底背屈も医師に確認した範囲で行う。
片側の下腿の腫れ・熱さ・痛みが増える、息苦しさや胸の痛みが出たら、すぐ知らせてもらい、運動より先に医師へつなぐ。
まとめ|適切な抗凝固療法のもとでの早期離床は、浮遊血栓がなく下肢痛が軽く全身状態が安定していれば勧められる。浮遊血栓があれば必ず医師と相談する。
明日からの臨床に活かすポイント抗凝固薬の種類・目標域と、療法後のフォロー方針を主治医に確かめる。
血小板が低いとき、負荷はどこまで上げる?

八柄
逆に、出血が心配なときもあります。化学療法中で血小板が低い患者さんに、負荷をどこまで上げていいのか。

齊藤
血小板は値の区分ごとに、注意する出血と運動の目安が変わる。5万を超えていれば止血機能はほぼ正常とされるが、出血の有無や薬は確かめる。
2万〜5万は粘膜出血に注意し、貧血症状を見ながら起立・歩行練習と中等度の活動、低負荷のレジスタンスを行う目安がある。
血液がんで血小板が低い患者で、弾性チューブの抵抗運動を行えたとする総説もある(Morishita ら 2020)。
1万〜2万は点状出血や関節内出血に注意し、抵抗をかけない愛護的な運動を機能維持の目的で行う。他動のROMはゆっくり動かし、最終可動域で強い圧迫を加えない。
1万未満は頭蓋内出血に注意し、活動を制限して意識障害の変化を常に見る。区分は注意の目安。運動するかと上限は、施設の中止基準と主治医の指示を先に確かめて決める。
血小板数の区分ごとの、注意する出血と運動の目安です。数値だけで運動の可否や上限は決めず、出血の有無・値の推移・薬と、施設の中止基準・主治医の指示を確かめます。
出典:日本がんリハビリテーション研究会編.がんリハビリテーションベストプラクティス.金原出版,2015 ほか(当会セミナーの配布資料に引用された表をもとに作図)。※当会セミナーの配布資料の内容をもとに、当メディアで作図(新規作図)。原画の転載ではありません。

八柄
2万〜5万の「貧血症状を見ながら」は、具体に何を見ればいいですか。

齊藤
Hbの値ごとの症状の目安は下の図にまとめた。Hb 8g/dL未満は貧血症状に注意し、起立・歩行の前後で心拍数・息切れ・皮膚や口唇の色と、めまいや倦怠感が出ていないかを確かめる。
Hb 7.5g/dL以下・WBC 3,000/μL以下・血小板5万/μL以下を、がんリハの中止基準に挙げる手引きもある。施設がこの基準を使っていれば、2万〜5万の目安より中止基準が先になる。
化学療法によるHbの低下は血小板より遅れて出ることが多いが、時期は薬や患者で違う。血小板が回復してもHbは別に追う。

Hbが下がるほど、心拍数の増加・息切れ・頭痛・めまい・倦怠感などの貧血症状が出やすくなり、8g/dL未満では注意が要ります。値だけで決めず、起立・歩行の前後に症状も確かめます。
出典:井上順一郎:がん.理学療法ジャーナル,2017 をもとに当会で作図。
まとめ|血小板の区分は注意の目安。運動するかは施設の中止基準と主治医の指示で決め、Hb 8g/dL未満では起立・歩行の前後で貧血症状を確かめる。
明日からの臨床に活かすポイント運動の前にその日の血小板数・Hbと施設の中止基準を確かめ、主治医の指示の範囲で負荷を決める。
きょうの視点(持ち帰り4つ)
- Dダイマー1つで離床を決めず、臨床確率・変化・所見と合わせて読む
- Wellsスコアの下肢5項目を確かめ、結果を医師に伝える
- 抗凝固療法中の離床は、浮遊血栓・下肢痛・全身状態を医師に確かめる
- 血小板の区分は目安。施設の中止基準と主治医の指示を先に確かめる

齊藤
……よし。じゃあ私は今日から、朝の体重計の1回の数値で昼を抜くのはやめる。前の日からの変化と、ベルトの穴と合わせて読むことにするよ。

八柄
(苦笑)ベルトの穴は下腿の所見じゃありません。でも、昼は食べてください。
【エビデンスに基づく判断基準】PT・OT・STのための血液・生化学データのリハビリへの応用~血栓症、出血傾向、がんを中心に~
この記事で扱った、Dダイマーや血小板の値から離床と負荷を考える話の背景になった講座です。
この講座で学ぶこと
✅ PT・APTT・Dダイマー・血小板を、程度・変化・組み合わせで読み解く視点を学ぶ
✅ Dダイマーが高い場面で、フィジカルアセスメントと医師への相談の要否の判断を学ぶ
✅ 抗凝固療法中のPT-INR・APTTを、治療としてのコントロール状態として読む方法を学ぶ
✅ 化学療法中の骨髄抑制で、白血球・Hb・血小板の値に応じた運動負荷の組み立てを学ぶ
受講者の声
「凝固、線溶系のデータは難しく、自分でもなかなか勉強できていなかったが、それぞれのデータにどんな意味があり、どのような場面で検査され、用いられるのかがわかって良かった。」(PT・10年目)
まず3分の動画で
2023年の別の講座から、鈴木先生がDダイマーの解釈と予防法を話したハイライトです(公式YouTube・3分38秒)。
本号は、当会セミナー(血液・生化学データのリハビリへの応用)の配布資料と、下の文献をもとに構成しました。症例や患者画像は使用しておらず、図は当会で作図しました。
本号の背景にある文献(8本)を開く
- 日本循環器学会/日本肺高血圧・肺循環学会合同ガイドライン.2025年改訂版 肺血栓塞栓症・深部静脈血栓症および肺高血圧症に関するガイドライン.2025.(Dダイマーと診断の流れ・抗凝固療法中の離床・PT-INR の目標域)
- 吉光一浩 他.人工股関節全置換術の周術期におけるVTE予防策の当院での現状.整形外科と災害外科.2019;68(2):277-280.(THA の周術期の施設の運用例)
- Wells PS, Owen C, Doucette S, et al. Does this patient have deep vein thrombosis? JAMA. 2006;295:199-207.(下肢の所見の項目)
- 日本がんリハビリテーション研究会編.がんリハビリテーションベストプラクティス.金原出版,2015.(血小板数ごとのリハの注意)
- Morishita S, et al. Physical exercise is safe and feasible in thrombocytopenic patients with hematologic malignancies: a narrative review. Hematology. 2020;25(1):95-100.(血液がんで血小板が低い患者の運動の総説)
- 畠中めぐみ,宮井一郎.DVTが疑われる患者に対する検査・診断とその対応は?-検査・診断と薬物治療とリハビリテーション医療-.MB Medical Rehabilitation.2022;(276):56-62.(VTE の再発リスク)
- 日本ペインクリニック学会.抗血栓療法ガイドライン 総論(抗血小板薬・抗凝固薬の薬理学).(APTT の調整の目安)
- 井上順一郎.がん.理学療法ジャーナル.2017.(Hb の値と貧血症状の目安)
監修 セラフォー齊藤
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企画 セラフォースタッフ 齊藤・八柄
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