片麻痺の体幹機能を点数化できますか|評価したものが、そのまま運動課題になる

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2026.08.07

深掘りセラピストマガジンVol.6|体幹機能を点数化できてますか?〜評価したものが、そのまま運動課題になる〜

深掘りセラピストマガジン|Vol.6
対談:セラフォー齊藤 × セラフォー八柄
 

八柄

齊藤さん、ちょっと聞いてもらっていいですか。今週の火曜、LINEでこんなお悩みが届いたんです。

火曜のLINEに届いたお悩み

「臥位での体幹トレーニングが、立位・歩行動作にうまく繋がらないことがあります」

同じ週の回答が57件あって、そのうち39件が「体幹の評価」を選ばれてました。運動療法の組み立て方より、評価のところで止まっている方が多いんですよね。

 

齊藤

(笑)あるねぇ。というか私、それ人のこと言えなくて。

今朝も体重計に乗って「先週より0.4kg減ってる」って喜んでたんだけど……よく考えたら、乗っただけで何もしてないんだよね。測って満足して終わってる。

 

八柄

で、この相談なんですけど。僕なりに考えた手順はあるんです。

背臥位では、指示どおりに体幹を動かせる。座位でも、まあできる。ところが立位になると、同じようにはできない。臥位で出せていた反応が、立ち上がると出せなくなるんです。

そういうとき僕はまず「臥位の課題が易しすぎるのかな」と考えます。抵抗を加えるか、反復回数を増やすか。つまり課題の難易度を見直すほうに手が動くんです。

……でも、それで立位の反応が変わった経験が、ほとんどないんです。同じ課題を一週間続けても、立たせると結局同じ。そこでいつも止まります。

 

齊藤

……八柄くん、いま私の体重計の話、きれいに流したねぇ。まあいい。

それより、いまの手順を聞いていてひとつ気になった。その「臥位ではできる」って、何を見て言ってる?

 

八柄

……え。えっと、体幹を屈曲・伸展・回旋させてもらって、そのときの筋緊張を触って診てます。

あとは、動きの左右差とか、動揺の出方とか……。

あ、でも、そう言われると「できている」の基準を、僕はちゃんと持ってないかもしれません。

 

齊藤

そこなんだよね。しかも、触り方にひとつ落とし穴があってね。

体幹の筋緊張を診るときは、重心の位置を変えちゃいけないんだ。

重心が前や後ろに動くと、姿勢を保とうとする筋活動が入ってくる。その活動が乗っかった状態で触っても、ベースにある筋緊張を診たことにはならないんだよ。

「歩行時の体幹動揺が分かりづらい」っていう相談も来てたでしょう。あれもね、動揺が見えてなかったというより、筋緊張として触っていたものに、姿勢を保つための活動が混ざっていた可能性がある。

 

八柄

……あ。そうか。

僕、体幹を動かしてもらいながら診てましたけど、その動きに合わせて重心も動いてましたよね。完全に混ざってました。

でも齊藤さん、重心を動かさずに体幹だけ動かすって、どうやるんですか。座ってもらった状態で体幹を動かせば、重心もついてきますよね。

 

齊藤

そこが工夫のしどころでね。胸郭と骨盤を、逆の方向に組み合わせるんだよ。

胸郭を前傾させながら、骨盤は後傾させる。胸郭を左に側屈させながら、骨盤は左を挙上させる。胸郭を左に回旋させながら、骨盤は右に回旋させる。

上と下で打ち消し合うから、重心を動かさずに体幹の分節的な運動だけが出せるんだ。片方の手掌を胸郭に、もう一方を下腹部に当てると誘導しやすいよ。

この状態が評価の条件。ここから重心移動を足していけば、そのまま難易度の段階づけになる。

図解 | Counter Movement による体幹の選択的運動練習

胸部と骨盤を逆方向に組み合わせる7項目

1腰部セッティングする
2胸部を前傾しながら骨盤を後傾させる
3胸部を後傾しながら骨盤を前傾させる
4胸部を左側屈しながら骨盤を左挙上(左坐骨は浮かさない)させる
5胸部を右側屈しながら骨盤を右挙上(右坐骨は浮かさない)させる
6胸部を左回旋しながら骨盤を右回旋(左膝を前に出す)させる
7胸部を右回旋しながら骨盤を左回旋(右膝を前に出す)させる

Counter Movement の実施姿勢と、重心移動なし・移動しながら・偏らせたままの3段階を示す足部図。

片側の手掌を胸郭に、もう一方を下腹部にあてると誘導しやすい。

 1〜7を重心移動させずに行う
 1〜7を重心移動しながら行う
 1〜7を重心をかたよらせたまま行う

上下で打ち消し合うので、重心を移動させずに体幹だけを動かせる①が評価の条件で、②③が難易度の段階づけになる。

※過去開催セミナーの配布資料の内容をもとに、当メディアで作図・文字組みを行ったもの(新規作図)

 

齊藤

で、もうひとつ。こっちはもっと身も蓋もない話なんだけどね。

体幹機能には、0〜23点で点数化できる評価尺度がもうあるんだよ。Trunk Impairment Scale。静的座位バランスが7点、動的座位バランスが10点、協調運動が6点。

脳卒中の後の体幹の運動障害を測る尺度として報告されたもので(Verheyden G, Clin Rehabil, 2004)、特別な機器はいらない。プラットホームと、6秒が計れる時計があればできる。

「主観的で定性的な評価に偏ってしまう」っていう相談も来てたよね。あれもね、定量的なやり方が無いわけじゃないんだよ。

図解 | Trunk Impairment Scale の構成

Trunk Impairment Scale の構成。静的座位バランス7点、動的座位バランス10点、協調運動6点、総合計0〜23点。

静的座位バランス(7点)・動的座位バランス(10点)・協調運動(6点)の3領域・23点満点。評価はすべて座位で完結する。

出典:Verheyden G. The Trunk Impairment Scale: a new tool to measure motor impairment of the trunk after stroke. Clin Rehabil. 2004 May;18(3):326-34.をもとに、当メディアで作図。

 

八柄

名前は知ってるんです。学生のときに習った記憶もあります。

ただ正直に言うと、僕、体幹の筋緊張を一度も点数で出したことがないんですよ。カルテには「体幹機能低下」って書く。書いた自分が、次に何をすればいいか分からないまま。

知ってるのに使ってない。たぶん、中身を説明できるほど覚えてないからだと思います。3つの領域、それぞれ具体的に何を診るんですか。

 

齊藤

並べるとこうなる。全部、座位のまま診られるものばかりだよ。

Trunk Impairment Scale | 3領域の内訳
領域 配点 何を診るか
静的座位バランス 7点 座位保持10秒 → セラピストが下肢を組ませて10秒 → 患者さん自身が組んで10秒
動的座位バランス 10点 麻痺側・非麻痺側それぞれの肘をマットについて戻る
麻痺側・非麻痺側それぞれの坐骨を浮かす
1回目/2回目/四肢の代償の有無で加点
協調運動 6点 上部体幹・下部体幹をそれぞれ左右3回ずつ回旋
6秒以内にできるか/左右対称にできるか
総合計 23点 すべて座位で完結する
Verheyden G. The Trunk Impairment Scale: a new tool to measure motor impairment of the trunk after stroke. Clin Rehabil. 2004 May;18(3):326-34. をもとに作成。
 

齊藤

ひとつだけコツを言うとね。下部体幹の回旋って、そのまま言っても伝わらないんだよ。

膝を交互に前へ出してくださいって言うと、だいたい出てくる。

 

八柄

そこまでは分かりました。……でも、ここからが本題な気がしていて。

相談してくださった方が困ってるのって、たぶん点数が出たあとですよね。その得点を、どうやって運動療法につなげるんですか。

点がついても、結局そこからまた別のプログラムを考えることになりませんか。

 

齊藤

八柄くん、そこがね、この尺度のいちばん面白いところなんだよ。

採点した項目が、そのまま運動課題になる。

麻痺側の坐骨を浮かす。非麻痺側の肘をマットについて戻る。膝を交互に前へ出す。——採点でやってもらった動作を、そのまま繰り返してもらえばいい。新しく考え直す必要がないんだ。

体幹の介入を扱った報告もいくつも読んできたけどね、やらせてる中身はこの尺度の項目とほとんど変わらないよ。難しいことはしていない。

それとね、この尺度は評価も運動課題も座位で完結する。臥位で積んだものを立位へどう渡すか悩む前に、診た場面とやる場面を揃えちゃう。相談者の詰まりには、ここが直接効くと思うよ。

図解 | 採点項目が、そのまま運動課題になる
評価(採点する)   運動課題(繰り返す)
座位で10秒保持できるか
静的座位バランス
座位で10秒保持する
麻痺側の坐骨を浮かせるか
動的座位バランス
麻痺側の坐骨を浮かせる
肘をマットについて戻れるか
動的座位バランス
肘をマットについて戻る
膝を交互に前へ出せるか
協調運動
膝を交互に前へ出す

上から順に行うものではありません。採点して点が取れなかった項目が、そのままその人の課題になります。

評価と運動課題が同じ動作・同じ姿勢で成立するので、両者をつなぐための翻訳作業がいらない。

※過去開催セミナーの配布資料の趣旨をふまえ、当メディアで概念図化(新規作図)

 

八柄

それなら明日からできます。……ただ、ひとつ引っかかってて。

採点してると、たぶん「これは代償なのか」で手が止まると思うんです。坐骨は浮いてる。でも上肢で支えてる気もする。

この線引き、どこに置けばいいんでしょうか。

 

齊藤

基準はひとつでいい。その課題を、自分の体でやってみることなんだ。

マットに肘をついて戻る。片方の坐骨を浮かす。——実際にやってみると分かるけど、自分は反対の手でマットを押さないし、体幹を大きく後ろへ倒したりもしない。体幹だけで成立する課題だからね。

つまり、体幹が働いていれば出てこないはずの動作が出ていたら、それが代償。上肢で押す、下肢で床を蹴る、勢いをつけて倒れ込む——どれも体幹以外の力で課題を成立させているということだから、その項目は0点の側につける。

迷ったら厳しめでいいよ。点が低く出るのは、そこに伸びしろがあるということだから。次にやることがはっきりするだけなんだ。

図解 |「これは代償か」の線引き

まず、その課題を
自分の体でやってみる

肘をマットにつく/坐骨を浮かす/膝を交互に前へ出す

自分でやっても出る動き

体幹が働いていれば
自然に伴う動作

代償ではない

得点はそのまま

自分では出ない動き

体幹以外の力で
課題を成立させている

代償として扱う

その項目は 0点 の側へ

代償として出やすい動作

反対の手でマットを押す/体幹を大きく後ろへ倒す/下肢で床を蹴る/勢いをつけて倒れ込む

判定の物差しは療法士自身の動き。迷ったときは厳しめにつけると、低く出た項目がそのまま次の運動課題になる。

※過去開催セミナーの配布資料の趣旨をふまえ、当メディアで概念図化(新規作図)

 

八柄

……整理させてください。

臥位でできたことが立位で出てこないとき、僕はずっと課題の量を足すほうに行ってました。でもその前に、座位で23点の尺度を当てて、点が取れなかった項目をそのまま課題にする。それだけでいい。

同じ週に「座位や立位を作るための体幹の評価が知りたい」っていう相談も来てました。入口は同じなんですね。静的座位バランスの最初の項目——麻痺側に重心を寄せて、そこで座っていられるか。自分でそこへ持っていけるか。

ここが取れるかどうかが、座位を作る出発点になる。……評価を増やす話だと思って聞いてましたけど、逆でした。すでにある評価を、最後まで使い切る話だったんですね。

 

齊藤

そういうこと。ただね、文面だけで決めつけるのは危ないから、ひとつだけ足しておくね。

急性期の体幹機能とその後のADLの関連を調べた報告だとね、平地歩行に介助がいる方では体幹機能がその後のADLに関わりやすい一方で、発症の時点で歩行能力が保たれている方では、体幹機能は6か月後のADLを予測する要因になっていなかった(Kim TJ, Ann Rehabil Med, 2015)。

つまり、全員に同じ順番が効くわけじゃない。やってみて点が取れてるなら、そこは伸びしろじゃないってことでもあるんだ。

 

八柄

……実は今週、ほかにもこんなお悩みをいただいているんです。

今週いただいた、まだお答えできていないご質問

Q歩行中の体幹の伸展回旋は、どう診ればいいですか?
Q体幹が原因なのか、他が原因なのか。どう分けますか?
Q上下肢との協調という視点から、体幹機能をどう診ますか?
 

八柄

今日の話だけだと、この3つにはまだ届いてないですよね。

 

齊藤

届いてないねぇ。この3つはどれも、今日の話のもう一段先なんだよ。

体幹が原因かどうかを分けるにも、上下肢との協調を診るにも、その前に押さえておく順番がある。記事の分量だと、そこまでは載せきれない。

ちょうど今週末、8月9日にね。今日話した体幹機能の評価から、運動療法へどうつなげるかまでを通しで扱う回があるんだよ。今日の続きは、そこで聞いてもらうのがいいと思う。

今週末開催脳卒中片麻痺の歩行リハビリテーション〜体幹スタビリティ向上と歩行を変えるための評価と運動療法戦略〜 山本泰三先生

脳卒中片麻痺の歩行リハビリテーション
〜体幹スタビリティ向上と歩行を変えるための評価と運動療法戦略〜

今日ふれた体幹機能の評価を、そこから運動療法へどうつなげるかまで通しで扱う回です。

山本泰三先生

山本 泰三 先生(理学療法士)
株式会社スターティングアゲイン 代表取締役

日時 2026年8月9日(日) 10:00〜15:00
    (途中1時間のお昼休憩あり)
受講料 6,000円
申込締切 8月9日(日) 午前9時59分

【見逃し配信あり】
当日ご都合が合わない方も、あとから視聴していただけます

▶ セミナー詳細・お申し込みはこちら

お申込みの際に、ご質問を書いていただけます。

きょうの視点(持ち帰り3つ)

  • 体幹の筋緊張を診るときは、重心の位置を変えない。重心が動くと姿勢を保つ活動が混ざって、ベースの評価にならない
  • 体幹機能には0〜23点で点数化できる評価尺度がある。採点項目がそのまま運動課題になるので、新しくプログラムを組む必要がない
  • 「これは代償か」の目安は、その人が普段バランスを崩したときに出ない動きが出ているかどうか。迷ったら厳しめにつける
 

齊藤

まとめると、新しくオリジナルで何か考えるのはやめて、評価したことに基づいてやっていく。今日はそれだけの話なんだよ。

……よし。じゃあ私は、明日から体重計に乗ったら、出た数字をそのまま腹筋の回数にすることにするよ。測ったものが、そのまま課題。

 

八柄

いったい何回やるんですか(苦笑)。それ、測ったものが課題になるって、そういう意味じゃないです。

……でも、測って終わりにしないという一点だけは合ってます。評価することと、やることが別々になった瞬間に手が止まる。だから採点表がそのまま課題表になる尺度は、それだけで強いんですよね。

臨床のお悩みは、火曜のLINEでお待ちしています。次の記事も、いただいた声からつくります。

齊藤
八柄
評価したものが、そのまま運動課題になる。

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企画 セラフォースタッフ 齊藤・八柄

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