学びの目標は、大きく立てて、小さく進める。ゴールの日付から、最初の一歩を決めよう。
2026.10.16
深掘りセラピストマガジンVol.16|学びの目標は、大きく立てて、小さく進める。ゴールの日付から、最初の一歩を決めよう。

八柄
齊藤さん、今日もよろしくお願いします。はじめに、10月13日(火)のLINEに答えてくださったみなさん、ありがとうございました。
聞いたのは「学びの目標を立てても、うまくいかない理由に近いのは?」です。いちばん多かったのは「期限や段階を決めていない」でした。
自由記述の声も届きました。
「脳血管を勉強するなど目標があいまいというのもありますが、段階、期限も決めてないので、参考書を読み研修に行き患者様に還元する。効果判定が出来ないのでふんわり終わることが多いと思います。」

齊藤
このままでは、何が身についたかを言えずに終わる。
できたかの印を決めないまま参考書を読み、研修に行くと、そうなりやすい。声の「ふんわり終わる」の元は、期限より前の「目標があいまい」にある、と私は見ている。
この記事では「脳血管を勉強する」を、3か月後に先輩に10分で説明できるところまで4段に分け、保存して使える目標シートにした。
この記事の結論
期限は、ゴールの「終わり」を決めてから置く。
- 5つの問いで目的を置き直し、どこまでできれば終わりかを決める(「〜すべき」で立てた目標も同じ)
- ゴールに日付を入れ、手の届く段に分けて、段ごとに期限と「できたかの印」をつける
- 期限が守れないときは、目的とゴールは保って手段を替え、学ぶ時間を足す前に止めることを決める
この記事でわかること
学びの目標に、期限や段階を決められないのはなぜか

八柄
先輩に言われて「肩を勉強すべき」と決め、本を買って3章で止まる。何が伸びたのかを聞かれると答えられません。

齊藤
分かるよ。私も毎年1月に「今年こそ早起きすべき」と紙に書いて、冷蔵庫に貼る。3月には紙だけが残っている。

八柄
火曜は僕も「期限や段階」を選びました。肩の本に期限をつけるなら、「今年中に読む」しか思いつきません。

齊藤
……八柄くん、いま私の冷蔵庫の話、きれいに流したねぇ。まあいい。その「今年中に読む」は、読み終える日はあっても、何ができるようになれば終わりかを決めていない。
参考にした講義資料では、目標が達成できないまま終わる原因を4つに整理している。3つ目と4つ目が、火曜でいちばん多かった答えだ。
その元が1つ目、「すべきこと」を目標にしていること、と私は見ている。「〜すべき」には、何ができるようになるかが書かれていない。

八柄
冒頭の声の「脳血管を勉強する」も、どこまでできれば終わりかが、まだ決まっていない形ですね。段階も期限も決めていない、と本人も書いていました。

齊藤
図2の3つの形のうち、期限と段階に関わるのは2つ目。終わりが無いと、期限の置き先も段の区切りも無い。だから期限より先に、目標を目的から置き直して、どこまでで終わりかを決める。
期限を決める前に、「〜すべき」の目標をどう置き直すか

八柄
目的と目標を、僕は同じ意味で使ってきました。「肩を勉強すべき」は、目的ですか、目標ですか。

齊藤
この記事ではこう分けて考える。目的は成し遂げたい事柄で、感情が入る。目標はゴールまでの途中に置く通過点だ。「すべき」はどちらでもない。

齊藤
置き直す道具は、同じ資料にある自分への質問5つ。図4の順に答えると、1つ目がゴール、2つ目が目的になる。「すべき」は目標から外れ、5つ目の答え、期限つきの最初の一歩として残る。
ゴールの日付と、そこまでの段階はどう決めるか

八柄
声の「脳血管を勉強する」を、自分の例で置き直してみます。僕なら担当の片麻痺の患者さんです。筋力訓練を続けても歩行速度が変わらず、何を勉強すれば説明できるかが決まりません。これに期限と段階をつけるには?

齊藤
その悩みで5つの問いに答えて、例を作った。目的は、担当する片麻痺の患者さんの歩行が遅い原因を、筋力不足だけでなく歩行の局面から説明できるようになりたい、という形。
ゴールは3か月後の○月○日に、所見・仮説・結果・介入前後の快適歩行速度をまとめ、先輩に10分で説明する。期限は、まずゴールの日付を決めるところから。通過点は4つ、図5に並べたよ。
画像をタップすると原寸で開けます。※当会(編集部)作成の例。当会セミナー(片麻痺歩行の動作分析)の案内ページの考え方をもとに当会作成。学びの行動の例で、評価や治療の内容を示すものではありません

齊藤
通過点2で、所見ごとに「原因候補・結果の可能性・まだ不明」を根拠とともに1行で書く。通過点3は、仮説を3つ並べて、除外評価と探索的評価で1つずつ確かめて絞る。

八柄
通過点ごとに期限があって、通過点3で仮説が絞れる。火曜の1位の答えですね。段の数は何で決めるんですか。

齊藤
数に決まりはない。資料では、本人の手が届く少し先を見えるようにして、そこまでをさらに小さな段に分ける、とあるよ。
この例では、まず2週間で表を作る設定にした。経験や業務量に合わせて調整してほしい。段ごとに期限を置き、できたかの印を決めておくと、止まった段がすぐ分かる。
画像をタップすると原寸で開けます。※当会セミナーの講義資料の記述(手の届く少し先を照らし、さらに小さく分ける段階)をもとに新規作図。例は当会セミナー(片麻痺歩行の動作分析)の案内ページの考え方をもとに当会作成
決めた期限が守れないときは、どうするか

八柄
僕が止まりそうなのは通過点2です。手段の週1回の歩行観察が、業務の立て込んだ週に飛ぶ。そこで期限が過ぎ、目標ごと消えてしまいます。

齊藤
そこで分けたいのが、戦略と戦術。目的や目標が戦略で、簡単には変えない。達成する具体的な手段が戦術で、流動的に変えてよい、という分け方がある。
この例なら、目的・ゴール・通過点が戦略、週1回の歩行観察のような手段が戦術だね。観察が止まったら、まず手段を替える。前提が変われば、通過点や期限も見直す。
代わりは先に並べる。1日5分で1つの局面だけ見る、同僚と同じ患者さんを見て所見を出し合う。解決策を2〜3個でやめる人が多い、という指摘もある。10個以上試すつもりで替える。
※当会セミナーの講義資料の記述(戦略と戦術・解決策の数)をもとに新規作図。例は当会セミナー(片麻痺歩行の動作分析)の案内ページの考え方をもとに当会作成

八柄
手段を先に並べてあれば消えませんね。ただ、時間は必要です。

齊藤
期限を守る準備は、行うことを足す前に止めることを決める。資料の目安は1日1,440分の1%、約15分。昼休みのスマホを15分やめれば、昼休みの最後の15分が「いつ行うか」になる。

八柄
……あ。そうか。止めることを先に決めると、「いつ行うか」が決まるんですね。「肩を勉強すべき」のときは、「今年中に」と書いただけで、いつ行うかを決めていませんでした。

齊藤
1枚のシートにした。画像をタップして原寸で開き、保存して自分の目標で埋めてみてほしい。
できたかの印は最初の段の分だけ書く欄にしたので、次の段へ進むときに、その段の印も決めてほしい。臨床の変化で確かめる方法はVol.12で扱った。
※当会セミナーの講義資料の記述(期限の書き方・時間の使い方・経験と成長)と、当会セミナー(片麻痺歩行の動作分析)の案内ページの考え方をもとに当会作成
きょうの視点
- ゴールに日付が入っているか。「今年中に」だけになっていないか
- ゴールまでの段に、それぞれ期限と「できたかの印」がついているか
- 止まりそうな手段の代わりと、止めることを先に決めてあるか

齊藤
……よし。じゃあ私は冷蔵庫の紙に、期限と段階を入れる。ゴールは「12月25日に、その週は平日5日とも6時半に起きている」。段は今週は水曜だけ、2週間後から水と金。
止めるのは寝る前のスマホ。将来の意味は「八柄くんより早く出勤する」で、ここは変えない。

八柄
(苦笑)将来の意味がそれですか。僕の出勤時刻を基準にしないでください。
……でも、冷蔵庫の紙に日付と段が入りましたね。期限や段階を決めていない学びの目標は、ゴールに日付を入れ、届く段に分けて、段ごとに期限を決める。今日はそういう話でしたよね。
齊藤
八柄
【見逃し配信】セラピストのための目標達成する技術〜変わりたいけど変われない人に向けての人生を豊かにするコツ〜
記事の4つの原因(図解1)と5つの問い(図解4)は、この講座の配布資料にあるものです。目標設定が失敗に終わる原因から、具体的な目標の立て方までを学べます。
講義内容
✅ 目標設定が失敗に終わる原因
✅ ヒトの認知が邪魔をする
✅ 問題解決を妨げる壁
✅ 目標を設定する前に重要なこと
✅ 選択に困った時のコツ
✅ 目標設定の具体的な方法
本号は、当会セミナー2本(目標達成の講座の配布資料・片麻痺歩行の講座の案内ページ)と、下の文献をもとに構成しました。分解例・図・目標シートは当会で作成しました。
本号の裏付け(解説メモ2つ)と文献(4本)を開く
研修に出るだけでは、臨床は変わりにくい
理学療法士の継続教育の研究では、講座に出るだけでは知識が増える根拠は限られ、患者さんの結果は改善しませんでした。
能動的な要素のある講座では臨床での行動が変わりやすく、講座に指導者つきの患者対応を加えると、患者さんの結果に影響があるように見えました。
だから通過点に、試して意見をもらう手順を入れます。
近い小目標と、「もし〜なら」の計画
遠い目標だけの群より、近い下位目標を置いた群で、習得と自己効力感が高まった実験がある(算数に困難のある子どもの自己学習。成人の療法士では未確認)。
「いつ・どこで・何が起きたら何をする」を先に決める計画(実行意図)は、目標の達成を高める傾向がメタ分析で示されている。
「できない日の代わりを決める」(図解8・シートの欄)は、この効果からの推論で、それ自体を検証した研究ではない。
- Menon A, Korner-Bitensky N, Kastner M, McKibbon KA, Straus S. Strategies for rehabilitation professionals to move evidence-based knowledge into practice: a systematic review. J Rehabil Med. 2009;41(13):1024-1032. DOI 10.2340/16501977-0451, PMID 19893996(リハビリ職の継続教育の系統的レビュー)
- Leahy E, Chipchase L, Calo M, Blackstock FC. Which learning activities enhance physical therapist practice? Part 1: systematic review and meta-analysis of quantitative studies. Phys Ther. 2020;100(9):1469-1483. DOI 10.1093/ptj/pzaa107, PMID 32529249(講座単独と、フィードバック・指導つきの実践の比較)
- Bandura A, Schunk DH. Cultivating competence, self-efficacy, and intrinsic interest through proximal self-motivation. J Pers Soc Psychol. 1981;41(3):586-598. DOI 10.1037/0022-3514.41.3.586(近い下位目標の実験)
- Gollwitzer PM, Sheeran P. Implementation intentions and goal achievement: a meta-analysis of effects and processes. Adv Exp Soc Psychol. 2006;38:69-119. DOI 10.1016/S0065-2601(06)38002-1(実行意図のメタ分析)
最後まで読んでくれてありがとうございます!
今日の記事が良かったという方は、スタンプを送ってもらえると嬉しいです。臨床のお悩みや相談はいつでもLINEに送ってください!
企画 セラフォースタッフ 齊藤・八柄
テーマ:
CATEGORY
人気記事
テーマ
All for the therapist
全てはセラピストの成長と、たくさんの笑顔のために









