深掘りセラピストマガジンVol.13|すぐ戻る・指先に残る・画像と合わない。頸部由来の上肢のしびれ、3つのケースと病態に応じた介入|Medical Contents
2026.09.25
深掘りセラピストマガジンVol.13|すぐ戻る・指先に残る・画像と合わない。頸部由来の上肢のしびれ、3つのケースと病態に応じた介入
「その場は良くてもすぐ戻る」
「手指のしびれが、とれません。」
本稿は、頸部由来の上肢のしびれで難渋する場面に、2つの症例でお答えします。各節は、症例、なぜそうなるかの解剖、手技と反応の読み方、変わらないときの次の一手の順に進みます。
当会セミナーの講義内容と、文末の文献をもとに編集部が構成しました。図解1〜5は講義資料をもとに当会で作り直し、図解6と表は新たに作成しています。症例は編集部の設定例です。
この記事の道すじ
いただいた声と、この記事の読み方

八柄
齊藤さん、よろしくお願いします。火曜のLINEに答えてくださったみなさん、ありがとうございました。
聞いたのは「頸部由来のしびれを診るとき、いちばん難渋する場面は?」です。
確認できた回答は25件。「介入しても、しびれが変わらない」が16件、「筋力低下を伴い、進め方に迷う」が7件、「画像所見と症状が合わない」が2件でした。自由記述は4件です。
僕が聞きたいのは、手順の前にある「なぜ」です。なぜすぐ戻るのか、なぜ指先に残るのか。そこが分かれば、次の一手を自分で選べる気がします。

齊藤
今日は、自由記述のうち2つを、1人ずつの患者さんに置き換えて話そう。症例は編集部の設定例で、実在の患者さんではない。
前提を1つ置く。症状が出ている場所と、原因の場所は、同じとはかぎらない。しびれが手や前腕に出ていても、由来は頸部のことも、肘や手関節のこともある。
頸部由来を疑ったら、見る順番がある。中枢の障害を除外し、症状の程度をつかみ、症状を誘発している高位を特定し、原因をつかむ。
最後に動きを観察して、動きの悪い高位を見つける。ここが、運動療法の効果を予測する手がかりになるとされる。
順番を飛ばさない理由は、リスクの管理だ。頸部への安易な介入は、神経症状をその場で強めることがある。

八柄
最初の、中枢の障害を除外する、はどう見分けますか。

齊藤
反射で見る。末梢の神経根の障害なら、上肢の反射が弱まるか消え、下肢の反射は正常のまま。筋の萎縮や線維束攣縮が見られることもある。
中枢の障害なら、上肢も下肢も反射が亢進する。バビンスキー反射が出る、手指の巧緻性が落ちる、といった所見が加わる。
ただし、頸髄の障害に神経根の障害が重なることがある。その場合、上肢の反射は弱いまま、下肢だけ亢進しうる。上肢の反射が弱いだけで、末梢と決めない。
中枢側の所見が1つでもあれば、頸部への介入を始める前に医師と共有する。ここから先の2つの症例は、この除外を済ませた前提で話す。
「すぐ戻る」ときは、動かない関節を探す

八柄
Bの声から始めます。冒頭の自由記述の1つ目です。
「その場は良くてもすぐ戻る」
その場では変わるのに、続かない。介入が合っているのか外れているのか、迷う場面です。
40代・事務職。上を向くと、右の前腕から母指へしびれが走る。
施術の直後は軽くなるが、その日の夜には戻っている。仕事では、棚の上の書類を出し入れすることが多い。
本人の言葉は「首を触ってもらうと楽なんですけど、続かないんです」。

棚の上の書類を出し入れするたびに、上を向く。しびれが出るのは、右の前腕から母指(色を付けたところ)。この場面では、上を向く動きと、腕を上げる動きを分けて、反応を見る。
※編集部の設定例をもとに、当メディアで作成したイメージ図です(実在の人物ではありません)

齊藤
この症例で避けたいのは、しびれが出る椎間を直接動かすことだ。症状を誘発している高位には、基本的には介入しないとされる。
症状を強めるおそれがあるなら、そこから離れた椎間、できれば下位から始める。上位頸椎は、治しやすいが傷めやすいとされるからだ。
では、どこを見るか。動かない関節だ。たとえば後頭骨と第1頸椎の関節が動かないと、その分の動きをC4/C5の椎間が代わりに担うことがある。
代わりに動く椎間には、力学的なストレスがかかる。だから介入するのは、ストレスを受けている椎間ではなく、動かない関節のほうだとされる。
この考え方は、痛みの文脈で示されている。しびれに当てはめるときは、介入のたびに反応を確かめながら使う。

八柄
だからか……。しびれが出る椎間を動かしても、動かない関節はそのまま。首を使うたびに、同じ椎間がまた代わりに動く。すぐ戻るのは、そのせいかもしれません。

齊藤
そう読める。代わりに動くこと自体は、X線でも示されている。195人の頸椎を、屈曲と伸展で撮ったX線で調べた研究がある。
ある椎間の変性の点数が1上がるごとに、その椎間の可動域は1.2度減り、1つ上の椎間の可動域は0.8度増えていた。
ただ、見ていたのは可動域で、症状との関係は調べていない。すぐ戻る理由としては仮説のまま、反応を確かめながら使う。

症状が出る椎間と、動かない関節は、別のことがある。介入は、動かない関節のほうから考える。
※当会セミナーの講義資料の図(原図:Primal Pictures の3D解剖画像, 2009)をもとに、当会で新たに作図しました(リメイク)

八柄
動かない関節は、どう探せばいいですか。

齊藤
頭部の動きと、頸部の動きを分けて見る。座ってもらい、横から観察する。
- 頭部の屈曲。あごを引いて、小さくうなずく
- 頭部の伸展。あごを上げる
- 頸部の屈曲。頭を前へ出す
- 頸部の伸展。頭を後ろへ引く
4つのうち、どれが小さいか、どれでしびれが出るかを見る。しびれが出たら、その動きはそこで止めて記録する。ふらつく人は、背もたれのある椅子で行う。
4つは、担う関節が違う。症状のない20人のX線では、頭を後ろへ引くと下位頸椎は伸展し、上位頸椎は屈曲していた。頭を前へ出す動きは、その逆だった。

頭部と頸部を分けて、4つの動きを見る。どれが小さいか、どれでしびれが出るかを記録する。
※当会セミナーの講義資料の写真をもとに、当会で新たに作図しました(リメイク)

八柄
上位頸椎を動かすのは、少し怖さもあります。

齊藤
その感覚は大事にしていい。上位頸椎の介入で大きなリスクの1つは、環椎と歯突起の位置関係だとされる。
関節リウマチなどで、環軸椎が不安定になっていることがある。上位頸椎に触れる前に、診断名と画像の所見を、医師からの情報で確かめておく。
ただ、診断名と画像だけで安全とは決めない。外傷の既往、不安定性の疑い、新しく出た神経所見や進んでいる神経所見。これがあれば触れずに、主治医に確認する。

八柄
確かめたうえで、実際にはどう動かしますか。

齊藤
後頭骨と第1頸椎の関節への手技を1つ挙げる。
- 肢位。あお向けで枕を使う。セラピストは頭側に座る
- 手の置き方。手のひらで後頭骨を下から支え、頭頂の方向へわずかに引いて、関節の負担を減らす
- 動かし方。小さくうなずいて戻ってもらい、その動きを介助する。動かす範囲はわずかで十分とされる
- 見るところ。うなずきが首全体の屈曲に変わっていないか。後頭骨が手のひらから浮くなら、範囲を小さくする
- 毎回聞くこと。しびれが出ていないか
終わったら、座って、最初と同じ順番で4つの動きを見直す。しびれや痛みが強まったら、その場でやめる。

動かす範囲はわずかでよい。後頭骨が手のひらから浮くなら、範囲を小さくする。
※当会セミナーの講義資料の写真をもとに、当会で新たに作図しました(リメイク)

八柄
見直して、変わらなかったときや、強まったときはどうしますか。

齊藤
変わらなければ、強めない。誘発している椎間から離れた、下位の椎間の動きを見る。屈曲と伸展で撮ったX線があれば、医師から所見をもらう。
下位の椎間には、椎間関節への手技がある。上を向くとしびれが出るうちは使わず、出なくなってから試す。あお向けで枕を使い、下位頸椎の棘突起を下から指で保持する。
そのまま、頸部を自分で伸展してもらう。セラピストの手か枕を押すように伝える。小さなうなずきと組み合わせると動きやすい。動かす範囲はわずかで十分とされる。
保持した指で、筋の活動が入るかを触れる。伸展は椎間孔を狭める向きなので、毎回しびれが出ていないかを聞き、出たらそこで止める。終わったら、座って4つの動きを見直す。
強まったら、その場でやめて楽な姿勢に戻し、同じ条件で測り直す。
戻らない、範囲が広がる、筋力の低下が加わる。こうしたときは、次の来院を待たずに、その日のうちに医師と共有する。
次の来院では、先に同じ条件で測ってから、3つを聞く。
- いつ戻ったか。帰り道か、その日の夜か、翌朝か
- その前に何をしていたか。デスクワーク、家事、運転など
- どのくらい続けたあとか。同じ姿勢や動作を続けた時間
生活の中で変えるのは1つだけにする。この症例なら、よく使う書類を、見上げずに届く高さへ移してもらう、などだ。
- 座って横から、頭部と頸部の屈曲・伸展の4つを見て、小さい動きと、しびれが出る動きを記録する
- 上位頸椎に触れる前に、診断名と画像の所見を医師からの情報で確かめる。外傷の既往、不安定性の疑い、新しい神経所見や進む神経所見があれば触れない
- あお向けで後頭骨を支え、小さなうなずきをわずかな範囲で介助し、座って4つを見直す
- 変わらなければ強めずに下位の椎間を見る。強まったらやめ、戻らなければその日のうちに医師と共有する
手指に残るしびれは、ジンジンと鈍さを分けて測る

八柄
冒頭の自由記述の2つ目です。
「手指のしびれが、とれません。」
頸部に介入しても、指先だけ残ることがあります。
60代。右の示指と中指のしびれが3か月続いている。首を後ろへ反らすと、しびれが強まる。
0〜10で聞くと、初回からずっと「5くらい」。本人の言葉は「ジンジンは減ったけど、指先の感じがぼやけたまま」。

首を後ろへ反らすと、右の示指と中指のしびれが強まる。しびれが出るのは、右の示指と中指(色を付けたところ)。3か月のあいだ、0〜10で聞くと「5くらい」のまま。本人の言葉は「ジンジンは減ったけど、指先の感じがぼやけたまま」。この2つを分けて読むところから始める。
※編集部の設定例をもとに、当メディアで作成したイメージ図です(実在の人物ではありません)

齊藤
まず、本人が「しびれ」と呼んでいるものを分ける。しびれには2つあるとされる。
- 陽性のしびれ。ないはずの感覚が出てくる。ジンジン、ピリピリ
- 陰性のしびれ。あるはずの感覚が減る。触られても分かりにくい、ぼやける
触覚が落ちていることも、患者さんは「しびれ」と呼ぶことがある。この症例の「ぼやけたまま」は、陰性の側の言葉だ。

八柄
だからか……。「5くらい」がずっと変わらないのは、減ったジンジンと、残った鈍さを、1つの数字にまとめて答えていたからかもしれません。

齊藤
そう読める。だから2つを別々に測る。陽性は、0〜10の数字と、体の図への書き込みで。
陰性は、同じ指先の同じ点に軽く触れて、健側を10としたらいくつかを聞く。目を閉じてもらい、左右に同じ強さで触れる。触れる点と順番は、毎回そろえる。
測った値は、数字のまま残す。「少し良い」では、次の回に比べられない。
| 陽性のしびれ | 陰性のしびれ | |
|---|---|---|
| 中身 | ないはずの感覚が出てくる | あるはずの感覚が減る |
| 本人の言葉の例 | ジンジンする、ピリピリする | 触られても分かりにくい、ぼやける |
| 経過記録の例 | 0〜10の数字と、体の図への書き込み | 目を閉じてもらい、左右の同じ点に同じ強さで軽く触れ、健側を10としていくつか |
| 測る場所 | しびれが出ている範囲 | 毎回同じ指先の、同じ点 |
陽性と陰性を1つの数字にまとめない。片方だけが変わることがある。
※当会セミナーの講義資料の分類をもとに、当メディアで作成(新規作成)。経過記録の例は編集部の設定例で、標準化された検査ではありません

八柄
そもそも指先に残るのは、どこで神経が圧迫されているからですか。

齊藤
神経根が圧迫される場所は、椎間孔の入口だ。18体の献体で調べた研究では、椎間孔は漏斗の形で、入口がいちばん狭く、圧迫はその入口で起きていた。
前からは、椎間板の突出と、鉤椎関節の骨棘が圧迫する。後ろからは、上関節突起、黄色靱帯、神経根のまわりの線維組織が圧迫する。
鉤状突起や上関節突起が変形すると、神経根だけでなく、血管も圧迫されるとされる。

神経根は、椎間孔の入口で、前と後ろから圧迫される。鉤状突起や上関節突起が変形すると、動脈は圧迫され、静脈はうっ血する。
※当会セミナーの講義資料の図(原図:神経局在診断, 文光堂, p79-80)と文献(Tanakaら 2000)をもとに、当会で新たに作図しました(リメイク)

八柄
この症例は、首を後ろへ反らすと強まります。その入口と関係がありますか。

齊藤
関係があると考えられる。5体の献体の頸椎に軽い荷重をかけ、椎間孔の径を測った研究がある。
中間位と比べて、伸展30度で径が13%小さくなり、屈曲30度で10%大きくなった。回旋では、はっきりした差はなかった。
ただ、献体での測定で、生きている人の症状を測ったわけではない。

八柄
だからか……。反らすと強まるのは、狭い入口がさらに狭くなるから、と読めるんですね。それなら、首を反らしている時間を生活の中で探してみます。

齊藤
聞くのは、反らしたまま続ける時間だ。高い位置のモニター、上の棚での作業、見上げる仕事など。
見つかったら1つだけ変えて、次の来院で陽性と陰性を別々に測り直す。陽性だけ下がって、陰性が残ることもある。

八柄
指先の分布が、教科書の支配域と少しずれることもあります。

齊藤
同じ献体の研究で、C5・C6・C7の後根の細い枝どうしが、硬膜の中でつながっていることが多かった。分布が少しずれるだけで、頸部由来を外さない。
肩甲骨まわりの痛みも手がかりになる。神経根1本だけを除圧した50人の研究がある。
肩甲上部の痛みはC5かC6、肩甲間部はC7かC8、肩甲部はC8の神経根の障害に多かった。分布と痛みの場所を、筋力と反射の所見と並べて高位を絞る。

肩甲骨まわりの痛みの場所は、高位の手がかりになる。筋力と反射の所見と並べて使う。
※当会セミナーの講義資料の図(原図:脊椎脊髄ジャーナル, 27(1):35-40, 2014)と文献(Tanakaら 2006)をもとに、当会で新たに作図しました(リメイク)

八柄
頸部と手根管の両方が関わっていることもありますか。

齊藤
ありうる。ただ、多くはなかった、という報告がある。手根管症候群か肘部の尺骨神経障害がある12,736肢の電気診断では、頸部の神経根の障害の併存は3.4%だった。
神経根と末梢神経の組み合わせが解剖学的に合っていたのは、全体の0.8%だ。所見は頸部と末梢で別々に取り、迷ったら医師と共有する。

八柄
陰性のほうが変わらないときは、どうしますか。

齊藤
陰性が変わらなくても、それだけで介入を外さない。同じ条件で測り続けて、推移を見る。
鈍い範囲が広がる、筋力の低下が加わる、手指の巧緻性が落ちる。こうした変化があれば、進める前に医師と共有する。

八柄
測り続ける、ですね。同じ「変わらない」で、火曜のLINEにはこんな声もありました。
「一度や1週間の介入ではADL上で著変ないことが多く、患者様のモチベーションを保つのが難しい。自主トレの定着も難しい。」
この症例も、本人の実感は3か月変わっていません。気持ちを保ってもらうには、どうしますか。

齊藤
まず、時間の見通しを持つ。頸椎椎間板ヘルニアによる神経根症の経過を調べたレビューでは、大きな改善は発症から4〜6か月以内に起こる傾向があった。
ただ、偏りの少ない研究は3件だけで、脊髄症や術後の経過には当てはめられない。
神経根症の144人を、首に特化した運動と、処方した身体活動の2群に分けた試験もある。どちらも認知行動的な関わりを加えて、3か月行った。
群の差はなく、両群とも改善していた。1週間で生活に変化が見えないのは、この幅から見れば珍しくない。

八柄
だからか……。モチベーションを保てなかったのは、1週間で見える変化を、生活の中に探していたからかもしれません。

齊藤
だから、生活より細かく追える記録を、初回から並べる。3つ挙げる。
- 陽性と陰性のしびれ。上の測り方で、別々に
- しびれが出るまでの時間。同じ姿勢で測る
- 小さなうなずきを保てる秒数。首の前の表層の筋が固くならない範囲で
3つ目には理由がある。慢性の首の痛みがある10人とない10人を比べた研究で、痛みのある群は、小さくうなずく課題で深い頸部屈筋の活動が低かった。
慢性の首の痛みの46人の試験では、小さくうなずく運動を6週間続けると、深い頸部屈筋の活動が上がり、胸鎖乳突筋と前斜角筋の活動は下がった。
筋力の練習では、深い頸部屈筋の活動に変化はなかった。神経根症の75人に14週間運動した試験では、首の屈筋の持久時間が両群で伸び、12か月後も保たれた。
ただ、どれも首の痛みか神経根症の人が対象で、しびれを直接測ってはいない。記録の例を、図解6に置いた。

前回と今回だけでなく、初回から並べて本人と見る。見通しの説明は、主治医の説明とそろえる。
※当メディアで作成(新規作成)。項目と並べ方は編集部の整理です。小さなうなずきを保てる秒数は、効果を検証した指標ではありません

八柄
自主トレは、どう絞りますか。定着しないのは、僕もよく経験します。

齊藤
地域で暮らす67〜82歳の15人に、自宅での運動を2・5・8種類で出した研究がある。7〜10日後の実技は、2種類の群が8種類の群より良かった。
神経根症の人の研究ではないけど、目安にはなる。この症例なら、2つに絞る。
- 1つ目は、あお向けで小さくうなずく運動。頭は枕から離さない。首の前の表層の筋に指先を当て、固くなる手前で止めて、保てた秒数を記録する
- 2つ目は、本人が選ぶ身体活動。散歩など、続けられるものを1つ
しびれや痛みが強まったら、その場でやめて楽な姿勢に戻す。戻らない、範囲が広がる、筋力や巧緻性の低下が加わる。こうしたときは次の来院を待たずに、その日のうちに連絡してもらう。立って行う運動なら、手すりや壁のそばで行ってもらう。

八柄
やる時間は、どう決めますか。

齊藤
本人に決めてもらい、毎日の動作に結びつける。健康習慣のまとめでは、朝に行う習慣や、本人が選んだ習慣が強くなりやすかった。
習慣になるまでの期間は中央値で59〜66日、個人差は4〜335日と大きかった。偏りのリスクが高い研究も含んでいる。
続かなかったら、1つに減らして、いつ・どこで・何のあとにやるかを決め直す。強まったら、やめる。戻らなければ、その日のうちに連絡してもらう。
- 本人の「しびれ」を、ジンジン(陽性)と鈍さ(陰性)に分けて聞く
- 陽性は0〜10と体の図、陰性は同じ指先に軽く触れて健側を10として測る
- 首を反らしたまま続ける時間を聞き、1つだけ変えて、陽性と陰性を別々に測り直す
- 分布と肩甲骨まわりの痛みを、筋力と反射の所見と並べて高位を絞る
- 見通しは主治医の説明とそろえ、1週間で生活の変化が見えにくいことを先に伝えておく
- 陽性と陰性のしびれ、出るまでの時間、うなずきを保てる秒数を、初回から並べる
- 自主トレは、小さくうなずく運動と、本人が選ぶ活動の2つに絞る
- やる時間は本人が決める。続かなければ1つに減らし、いつ・どこで・何のあとにを決め直す
画像と症状が合わないときは、高位を突き合わせる

八柄
最後にAです。画像で変化がある高さと、しびれの範囲が、神経の支配領域として重ならない場面です。

齊藤
画像が映すのは構造の変化で、それが症状を出しているかまでは示さない。症状のない1,211人の頸椎MRIでも、椎間板の膨隆が87.6%に写っていた。
それに、CTやMRIは寝た姿勢で撮る。不安定性や動きの消失は屈曲と伸展で撮ったX線で、椎間孔は斜めから撮ったX線で見るとされる。
解剖の理由もある。C6とC7の後根の細い枝は、硬膜の中で椎間板2つ分の高さを通っていた。画像の高さと症状の高さが、ずれて見えることもありうる。

八柄
だからか……。合わないのは、画像と症状のどちらかが間違っているから、とはかぎらないんですね。

齊藤
画像の高さを、臨床の高さの隣に置く。臨床の高さは、しびれの分布、肩甲骨まわりの痛み、筋力、反射の所見で決める。
一致すれば、そこは誘発している高位の候補だ。そこは避けて、離れた椎間か、動かない関節から始める。
合わなければ、ずれを記録して医師と共有する。画像を外すのでも、症状を画像に合わせるのでもない。
- 画像の高さと、分布・肩甲骨まわりの痛み・筋力・反射で決めた臨床の高さを並べる
- 一致すれば、そこを避けて、離れた椎間か動かない関節から始める
- 合わなければ、ずれを記録して医師と共有する
止める線と、場面ごとの一手

齊藤
ここでは運動と手技に絞ったけど、選択肢は他にもある。物理療法、装具、そして医師が判断する薬物療法や手術。
ただし、断っておくことがある。ここで話したのは見立てと介入の一例であって、原因の決め方ではない。
私たちは目の前の患者さんを診ていないから、この記事で原因を決めることはできないよ。
筋萎縮が進んでいる、夜間の症状が強い、感覚障害の範囲が広がっている。急に進む筋力低下や両側の症状、ボタンかけなど巧緻動作の低下、歩きにくさもだ。
こうした所見があるときは、自分の中で結論を出す前に、医師と共有してほしい。この一覧は網羅的ではなく、当てはまらないだけで安全とは判断しないでほしい。
場面ごとの一手は、表2に並べておく。
| 場面 | 測ってから行う一手 | 止める・共有する |
|---|---|---|
| すぐ戻る | 座って4つの動きを見て、動かない関節から。上位頸椎は医師からの情報を確かめてから(第2節) | しびれや痛みが強まればやめる。戻らなければ、その日のうちに共有 |
| 手指に残る | 陽性と陰性を分けて測り、首を反らし続ける時間を1つ変える。変わらなければ、細かく追える記録を初回から並べ、自主トレを2つに絞る(第3節) | 強まればやめる。戻らない、鈍い範囲が広がる、筋力や巧緻性の低下が加わるときは、その日のうちに共有 |
| 画像と症状が合わない | 画像の高さと臨床の高さを並べる(第4節) | 合わなければ、ずれを記録して共有 |
どの場面でも、最初と同じ条件で測り直してから次へ進む。上に挙げた所見があれば、進める前に医師と共有する。
※本文の内容を編集部が一覧にまとめた(新規作成)。効果を検証した手順ではありません

八柄
分かりました。すぐ戻るなら動かない関節、指先に残るならジンジンと鈍さ。なぜそうなるかが分かると、次に何を測るかが決まります。

齊藤
まとめると、要点は1つだ。1回の所見で決めず、同じ条件で測って重ねて読む。
評価の順序から、誘発高位を避けて隣接関節から組む運動療法、術後合併症(軸性疼痛・C5麻痺)までを学びたい人のために、記事の最後にセミナーの案内を置いておくよ。

八柄
ありがとうございました。次に「すぐ戻る」症例を診るときは、しびれが出る椎間の前に、動かない関節を探してみます。
頸部由来の上肢のしびれは、1回の所見で決めない。同じ条件で測り、重ねて読む。今日はそういう話でした。
齊藤
八柄
これで怖くない 頸椎疾患の病態理解とリハアプローチ〜画像読影・術前術後のリスク管理と治療介入〜
この記事で扱ったのは、3つの場面の見立てと、手技の一部です。中枢障害の排除→程度把握→高位特定→原因把握という評価の順序から、誘発高位を避け隣接関節から組む、術後合併症(軸性疼痛・C5麻痺)を踏まえた運動療法までを学べるのがこちらのセミナーです。
講師は、白金整形外科病院 理学療法教育部長の瀧田勇二先生。病態のみかたと術後合併症、頸椎の機能解剖と評価、病態別アプローチと歩行障害への介入を扱う3時間です。
※当日参加できない場合も、録画した復習用動画を視聴できます
編集部注記
本稿が扱うのは、頸部由来の上肢のしびれで難渋する場面での、見立てと介入の一例です。単独の所見や画像で、原因や病態を確定するものではありません。
図解1〜5は、講義資料の写真や図をもとに当会で作り直しました。スライドの原画は使用していません。図解6と表は、当メディアで新たに作成しました。
症例は編集部の設定例で、実在の患者さんではありません。上位頸椎への介入は、主治医の指示と施設の決まりに従ってください。
自由記述は、いただいた原文のまま掲載しています。
本号の背景にある文献(16本・タップで開く)
- Simpson AK, Biswas D, Emerson JW, Lawrence BD, Grauer JN. Quantifying the effects of age, gender, degeneration, and adjacent level degeneration on cervical spine range of motion using multivariate analyses. Spine. 2008;33(2):183-186. PMID: 18197104. DOI: 10.1097/brs.0b013e31816044e8.(195人の頸椎の屈曲・伸展X線の後ろ向き研究。ある椎間の変性の点数が1上がるごとに、その椎間の可動域は1.2度減り、1つ上の椎間は0.8度増えた。症状との関係は見ていない=第2節の根拠)
- Ordway NR, Seymour RJ, Donelson RG, Hojnowski LS, Edwards WT. Cervical flexion, extension, protrusion, and retraction. A radiographic segmental analysis. Spine. 1999;24(3):240-247. PMID: 10025018. DOI: 10.1097/00007632-199902010-00008.(症状のない20人の側面X線。頭を後ろへ引く動きは下位頸椎の伸展と上位頸椎の屈曲、頭を前へ出す動きは下位頸椎の屈曲と上位頸椎の伸展からなる=第2節と図解2の根拠)
- Tanaka N, Fujimoto Y, An HS, Ikuta Y, Yasuda M. The anatomic relation among the nerve roots, intervertebral foramina, and intervertebral discs of the cervical spine. Spine. 2000;25(3):286-291. PMID: 10703098. DOI: 10.1097/00007632-200002010-00005.(18体の献体。椎間孔は漏斗状で入口が最も狭く、圧迫は入口で起きる。前は椎間板と鉤椎関節の骨棘、後ろは上関節突起・黄色靱帯・神経根周囲の線維組織。C6とC7の後根の枝は硬膜内で2椎間を通り、C5〜C7の後根の枝どうしのつながりが多い=第3節・第4節と図解4の根拠)
- 神経局在診断. 文光堂. p.79-80.(図解4の原図。書誌は講義資料の表記による)
- Yoo JU, Zou D, Edwards WT, Bayley J, Yuan HA. Effect of cervical spine motion on the neuroforaminal dimensions of human cervical spine. Spine. 1992;17(10):1131-1136. PMID: 1440000. DOI: 10.1097/00007632-199210000-00001.(5体の献体の頸椎に軽い軸方向の荷重。中間位と比べ、椎間孔の径は伸展30度で13%小さく、屈曲30度で10%大きい。回旋では有意差なし。献体での測定=第3節の根拠)
- Tanaka Y, Kokubun S, Sato T, Ozawa H. Cervical roots as origin of pain in the neck or scapular regions. Spine. 2006;31(17):E568-573. PMID: 16924193. DOI: 10.1097/01.brs.0000229261.02816.48.(神経根1本だけを除圧した連続50人の研究。肩甲上部の痛みはC5・C6、肩甲間部はC7・C8、肩甲部はC8の神経根障害に多い=第3節と図解5の根拠)
- 脊椎脊髄ジャーナル. 2014;27(1):35-40.(図解5の原図。書誌は講義資料の表記と出版社の記録による)
- Morgan G, Wilbourn AJ. Cervical radiculopathy and coexisting distal entrapment neuropathies: double-crush syndromes? Neurology. 1998;50(1):78-83. PMID: 9443461. DOI: 10.1212/wnl.50.1.78.(手根管症候群か肘部の尺骨神経障害がある12,736肢の電気診断報告の調査。頸部神経根障害の併存は435肢・3.4%、解剖学的に合う組み合わせは98肢・全体の0.8%=第3節の根拠)
- Wong JJ, Côté P, Quesnele JJ, Stern PJ, Mior SA. The course and prognostic factors of symptomatic cervical disc herniation with radiculopathy: a systematic review of the literature. Spine J. 2014;14(8):1781-1789. PMID: 24614255. DOI: 10.1016/j.spinee.2014.02.032.(頸椎椎間板ヘルニアによる神経根症の経過。大きな改善は発症後4〜6か月以内に起こる傾向。低バイアスの研究は3件=第3節の時間の見通しの根拠)
- Dedering Å, Peolsson A, Cleland JA, Halvorsen M, Svensson MA, Kierkegaard M. The Effects of Neck-Specific Training Versus Prescribed Physical Activity on Pain and Disability in Patients With Cervical Radiculopathy: A Randomized Controlled Trial. Arch Phys Med Rehabil. 2018;99(12):2447-2456. PMID: 30473018. DOI: 10.1016/j.apmr.2018.06.008.(神経根症の144人。首に特化した運動と処方した身体活動を、どちらも認知行動的な関わりを加えて3か月。群の差はなく、両群とも経時的に改善=第3節の根拠)
- Falla DL, Jull GA, Hodges PW. Patients with neck pain demonstrate reduced electromyographic activity of the deep cervical flexor muscles during performance of the craniocervical flexion test. Spine. 2004;29(19):2108-2114. PMID: 15454700. DOI: 10.1097/01.brs.0000141170.89317.0e.(慢性の首の痛み10人と対照10人の比較。あお向けでの頭頸部屈曲の課題で、痛みのある群は深い頸部屈筋の筋電図の活動が低い=第3節の根拠)
- Jull GA, Falla D, Vicenzino B, Hodges PW. The effect of therapeutic exercise on activation of the deep cervical flexor muscles in people with chronic neck pain. Man Ther. 2009;14(6):696-701. PMID: 19632880. DOI: 10.1016/j.math.2009.05.004.(慢性の首の痛みの46人を、頭頸部屈曲運動と筋力運動に分けて6週間。前者で深い頸部屈筋の活動が上がり、胸鎖乳突筋と前斜角筋の活動が下がった。筋力運動では深い頸部屈筋に変化なし=第3節の根拠)
- Halvorsen M, Falla D, Gizzi L, Harms-Ringdahl K, Peolsson A, Dedering Å. Short- and long-term effects of exercise on neck muscle function in cervical radiculopathy: A randomized clinical trial. J Rehabil Med. 2016;48(8):696-704. PMID: 27494094. DOI: 10.2340/16501977-2120.(神経根症の75人、首に特化した運動か処方した身体活動を14週間。首の屈筋の持久時間は両群で伸び、12か月後も保たれた。解析は追跡できた50人=第3節の根拠)
- Henry KD, Rosemond C, Eckert LB. Effect of number of home exercises on compliance and performance in adults over 65 years of age. Phys Ther. 1999;79(3):270-277. PMID: 10078770. DOI: 10.1093/ptj/79.3.270.(地域で暮らす67〜82歳の15人に一般的な筋力運動を2・5・8種類。7〜10日後の実技は2種類の群が8種類の群より良好。自己申告の実施率に差はなし=第3節の根拠)
- Singh B, Murphy A, Maher C, Smith AE. Time to Form a Habit: A Systematic Review and Meta-Analysis of Health Behaviour Habit Formation and Its Determinants. Healthcare (Basel). 2024;12(23):2488. PMID: 39685110. DOI: 10.3390/healthcare12232488.(20研究・2,601人、11研究は偏りのリスクが高い。習慣化までの中央値59〜66日、個人差4〜335日。朝の習慣と本人が選んだ習慣が強くなりやすい=第3節の根拠)
- Nakashima H, Yukawa Y, Suda K, Yamagata M, Ueta T, Kato F. Abnormal findings on magnetic resonance images of the cervical spines in 1211 asymptomatic subjects. Spine. 2015;40(6):392-398. PMID: 25584950. DOI: 10.1097/brs.0000000000000775.(症状のない1,211人の頸椎MRI。椎間板の膨隆87.6%=第4節の根拠)
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企画 セラフォースタッフ 齊藤・八柄
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