今の職場で成長できているか分からない。学びを臨床の変化で確かめるには?

Medical Contents

メディカルコンテンツ

2026.09.18

深掘りセラピストマガジンVol.12|今の職場で成長できているか分からない。学びを臨床の変化で確かめるには?

深掘りセラピストマガジン|Vol.12
対談:セラフォー齊藤 × セラフォー八柄

火曜のLINEで、「いまの職場で、この先の自分を考えるとき、いちばん近いのは?」と伺ったところ、「伸びたいが、目標が決まらない」という悩みが寄せられました。

LINEに届いた読者の声|原文

「運動器疾患を診られるようになりたいというフワッとした思いは思うのですが、そこに向けてどのように自己研鑽を積んでいくべきなのかが分からず、また自分が目標に向けて進めているのかも分からないです。」

今回考えるのは、今の職場で成長できているかを、受講した数ではなく臨床の変化で確かめる方法です。

この記事の使い方|どれか1つでOK

  • じっくり読む → このまま対談へ(約9分)
  • 要点だけ見る → 「あすの5行メモ」へ
  • 明日すぐ使う → メモの5行を明日の1症例で書く

1「勉強しなきゃ」を、確かめられる目標に変える
yagara(base)

八柄

齊藤さん、今週もよろしくお願いします。LINEに声を寄せてくださった皆さん、ありがとうございます。

今回は、伸びたい気持ちはあるのに、「何から手をつければいいか」「前に進めているか」が分からないという相談です。

saito(ask)

齊藤

「運動器を診られるようになりたい」と思っても、そのままでは範囲が広くて、次に何を学ぶかを決めにくい。将来の目標を先に決めるより、最近の臨床で困った場面を1つ思い出すほうが、具体的に考えられるよ。

八柄くんも、治療しているのに思うような結果が出ず、悩んだ経験はある?

yagara(panic)

八柄

あります。膝の痛みがある方を担当したとき、治療しても思うような結果が出なくて悩みました。

評価はしていたんですが、その結果から何を優先して治療するか迷ってしまって。何を勉強すれば、この方の治療に役立つのかも分からなかったです。

saito(base)

齊藤

そういうときに「膝をもっと勉強しなきゃ」とひとまとめにすると、何を学んでも足りない気がしてしまう。まず、困りごとを分けよう。同じ「分からない」でも、必要な学習は違うんだ。

学習を選ぶときの目安 | 編集部作成

① 知識:何を確認すべきか分からない
関連する解剖・病態・評価の目的を、本や講義で整理する。

② 技術:評価の方法に自信がない
測定条件や手順を確認し、実施しているところを指導者に見てもらう。

③ 推論:所見から方針を決められない
症例検討で、考えた仮説と、その根拠・合わない所見を出して確認する。

yagara(aha)

八柄

僕の膝の例は③でした。「膝を勉強しなきゃ」とひとまとめにしていたけれど、困っていたのは、評価の結果から治療を考えるところだったんです。

この場合、目標は「膝について勉強する」のままでよいのでしょうか。

saito(base)

齊藤

そこを、確かめられる形に書き換えよう。「何を学ぶか」だけでなく、「何ができたらよいか」まで決める

コツは、期限・対象の症例・確認できる行動の3つを入れること。ここまで具体的なら、できたかどうかを自分で確かめられる。

確かめられる目標への書き換え例 | 編集部作成

「膝関節を勉強する」
→ 2週間後の症例検討で、担当中の膝の1症例について、方針の根拠にした所見と、追加で確認したいことを説明する。

「歩行分析ができるようになる」
→ 次の5症例で、歩行の観察から問題点を1つ挙げ、仮説と、それを確かめる所見を記録に残す。

2あすの1症例で、推論を回す
yagara(wonder)

八柄

目標が行動の形になると、やることが見えますね。ただ、学んだあとに「前へ進めた」と判断するには、何を見ればよいですか。受講したセミナーの数では、変わった実感が持てなくて。

saito(base)

齊藤

受講数や読んだページ数では、臨床推論が変わったかは分からない。見るのは症例だよ。介入の前に仮説と予測を書いておき、結果を見て、考えをどう更新したかを確かめる。

昔の自分を振り返ると、症例の説明がだんだん長くなって、それだけで推論が深まった気になっていた時期があった。並べていたのは、仮説を支持する所見だけだったんだ。

説明が長くなっただけでは、推論の質が上がったとは限らない。自分の仮説を支持する所見だけでなく、合わない所見まで挙げられるかを確かめたい。

yagara(panic)

八柄

耳が痛いです。僕も、説明が長くなると勉強した気になっていました。ただ、毎症例でそこまで丁寧に振り返る時間は、正直取れません。

saito(joy)

齊藤

毎症例でなくていい。明日は1症例だけ。介入前3分・介入直後1分・その日のうち1分の、計5行で足りる。書くのは、この1枚だけ。

あすの5行メモ|1症例・5分・1相談

介入前(3分)

1困っている動作と、重要な所見を1文で書く
2仮説を2つ。それぞれに支持する所見・合わない所見を書く
3仮説を分ける所見を1つ選び、介入で予測する変化を書く

介入直後(1分)

4予測した変化と、実際に起きた変化を書く

その日のうち(1分)

5仮説を維持・修正・保留した理由を書く

構造化された症例の振り返りは、医学生の研究で学習効果が報告されています[3]。PTの臨床推論教育は、症例学習・シミュレーションなど方法の検討が続いている段階です[1][2]。

単一の最良の方法はまだ定まっていません。小さく試して、自分の臨床で確かめる前提の型です。

相談は1点だけ。この5行を見せて、「この仮説を分ける所見の選び方に、見落としはありますか」と確認します。
yagara(base)

八柄

型は分かりました。実際の症例では、どんな文になるのでしょうか。

saito(base)

齊藤

架空の膝の症例で書くと、下の例のようになる。予測どおりにならない日があっていいんだ。外れた予測は、仮説を絞り込む情報だからね。

5行メモの記入例 | 架空の症例・編集部作成

1.立ち上がりで膝の内側に疼痛。荷重すると増える。

2.仮説A=荷重時の負荷集中(支持:荷重時の疼痛/合わない:安静時にも軽い疼痛)。仮説B=炎症が中心(支持:安静時の疼痛/未確認:局所の熱感)。

3.分ける所見=荷重条件を変えたときの疼痛の変化。予測=立ち上がり方の調整で疼痛が減る。

4.予測した変化は出なかった。疼痛はほぼ同じ。

5.仮説Bを先に確かめる形に修正。熱感と夜間の疼痛を次回確認する。

編集部作成の架空例で、特定の患者・八柄の担当症例ではありません。実際の評価・治療は所属先の指導体制のもとで行ってください。
yagara(wonder)

八柄

書いてみて、埋められない行があるときは、どうすればよいですか。

saito(base)

齊藤

いい質問だね。書けない行が、そのまま次の学習テーマだよ。1行目が埋まらないなら病態や評価の知識、2行目なら仮説の引き出し、3行目なら仮説を分ける評価の知識か技術。

第1節の目安に戻って、そこだけ学べばいい。「膝を全部勉強する」より、ずっと早く臨床に返ってくる。

yagara(base)

八柄

介入前に3行、あとは1行ずつなら、業務の中でも書けそうです。ただ、一人で見返すだけだと、自分に都合のよい所見ばかり集めてしまいそうです。

3ひとりで抱えない場所を決める
saito(base)

齊藤

だから、「誰に、いつ、確認してもらうか」まで決めておこう。職場に相談できる先輩がいるなら、週1回、5行メモを見てもらう。いなければ、院外の症例検討会や講義の質問時間を使う方法もある。

症例の情報を外で扱うときは、所属先の規定に従って、個人を特定できる情報を出さないことが前提だよ。

資格取得後のPTの学習を調べた研究でも、受講だけでなく、他者とのつながりや、自分の考えを揺さぶる課題が重視されていた[4]。学ぶ内容だけでなく、確認してもらう相手まで計画に入れたい。

yagara(base)

八柄

相談して、先輩の見方が自分と違ったときは、どう受け止めればよいですか。正しい方に合わせるべきか、迷いそうです。

saito(base)

齊藤

どちらが正しいかを、その場で決めなくていい。仮説が1つ増えたと考えよう。次の介入前のメモに先輩の仮説も並べて、2つを分ける所見を探す。

相談の結果が、そのまま3行目の材料になる。合わせるのでも張り合うのでもなく、症例で確かめる。これなら関係も学びも壊れない。

yagara(wonder)

八柄

職場でも院外でも、すぐに相談できる人が見つからないときは、AIを使えますか。答えを聞くのではなく、自分の考えを整理するために。

saito(base)

齊藤

使うなら、解説役ではなく質問役を任せるのがよいと思う。先に自分の仮説を書き、「支持する情報に偏っていないか」「何を確かめれば仮説の順位が変わるか」を聞いてもらう。次の文をそのまま使ってみて。

AIに入力する質問文 | コピーして使える例

私は運動器領域の臨床推論を学んでいます。これから、患者情報を含まない自分の学習メモとして、「問題の捉え方」「現在の仮説」「支持する情報」「合わない情報」を入力します。

すぐに解説や診断候補を提示せず、質問を1つずつしてください。私が答えてから次へ進んでください。

  • 問題の捉え方に不足している観点はあるか
  • ほかに検討すべき説明はあるか
  • 各仮説の「支持・不一致・未確認」は何か
  • 仮説の優先順位を変える所見は何か
  • 何を予測し、どの結果なら仮説を見直すか

私が書いていない患者情報は補わないでください。最後に、専門書や論文で調べ直すことと、症例検討で相談することを分けて整理してください。診断や個別の治療法は提案しないでください。

使うときの前提:カルテ・患者画像・個人を特定できる情報は入力しない(所属先の規定に従う)/AIの返答にも間違いはあるため、挙がった文献や根拠は原文で確かめる/患者さんへの治療判断には、そのまま使わない。
yagara(base)

八柄

AIの解説を読んで終わるのではなく、質問に答えられなかったところを調べて、予測まで書いてから、人に確認してもらうんですね。

saito(base)

齊藤

そう。最後に、「いつ、誰と確認するか」を決めておこう。週の終わりに5行メモを見返すと、自分の仮説の癖も見えてくる。1週間で終わらなければ、範囲を狭めるか期限を調整すればいい。

目標は、「勉強する」から「症例について仮説を立て、結果を予測し、結果に応じて推論を更新できる」へ。ここまで来れば、最初の相談にあった「進めているか分からない」にも、自分で答えられる。

yagara(joy)

八柄

「今の職場で成長できているか」を、受講した数だけで判断しなくてよいと分かりました。まずは明日、迷った症例を1つ選んで、5行を書いてみます。ありがとうございました。

saito(joy)齊藤
yagara(joy)八柄
火曜のLINEに届いた悩みを、金曜に「明日1つ試せる形」まで深掘りしてお届けします。

本号の背景にある文献

  • [1] Fu W, Baldwin TF, Brechter JH, et al. Effects of Educational Interventions Designed to Develop Physical Therapist Learners’ Clinical Reasoning: A Systematic Review. Phys Ther. 2025;105(3):pzae182. DOI(PT学習者の臨床推論教育40研究の系統的レビュー)
  • [2] Ndacayisaba G, Vanderweyen J, Mapinduzi J, et al. Effectiveness of various pedagogical tools to enhance clinical reasoning in physiotherapy: a systematic review. Physiother Theory Pract. 2026 Apr 27:1-15. DOI(理学療法の臨床推論教育34研究の系統的レビュー)
  • [3] Mamede S, van Gog T, Moura AS, et al. Reflection as a strategy to foster medical students’ acquisition of diagnostic competence. Med Educ. 2012;46(5):464-472. DOI(医学生対象の構造化振り返り研究。PTの患者転帰を直接検証したものではない)
  • [4] Leahy E, Chipchase L, Calo M, Blackstock FC. Which Learning Activities Enhance Physical Therapist Practice? Part 2: Systematic Review of Qualitative Studies and Thematic Synthesis. Phys Ther. 2020;100(9):1484-1501. DOI(資格取得後PTの学習活動に関する質的研究レビュー)

読んだ感想を、ひとこと教えてください

まだ試していなくてもかまいません。読んで思ったこと、引っかかった点、5行メモで止まった点。どれか1つ送ってもらえると、次号で深掘りします。1分で終わります。

感想・悩みを送る

最後まで読んでくれてありがとうございます!

今日の記事が良かったという方は、スタンプを送ってもらえると嬉しいです。臨床のお悩みや相談はいつでもLINEに送って下さい!

企画 セラフォースタッフ 齊藤・八柄

All for the therapist

全てはセラピストの成長と、たくさんの笑顔のために